6/24第三作初の短編集「白龍抄」発行水月あす薫(みずきあすか)
詳細はリンクしている「ルナーズファウンテン」でどうぞ。
 
愛の糸 書籍化!
JUGEMテーマ:恋愛小説
『愛の糸』はじめから 読まれる方は こちらから

京都図書喫茶  cafe bibliotic hello

http://www.monologuecafe.com/cafe/hello.htm

にも 置かせていただいています。


★純喫茶 星港夜
(シンガポールナイト)と http://r.tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4008694/

癒しの店 HOUREN(宝蓮にあります。
http://www.xpress.ne.jp/~kura_kamuro/


星港夜さん 宝蓮さん ありがとうございます

詳細は ルナーズファウンテン(アメブロ ブログ)にて

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千に咲く」「愛の糸」 二作 カップリング。

 本ブログより「愛の糸」 表題「千に咲く」はルナーズファウンテンより 。


イラストは「アリアン工房」のアリアンさんです。
http://ameblo.jp/arianarian/

アリアンさん
ありがとうございました

こんなKannji☆の yozoさんが 本の紹介をしてくださいました。
http://yowzo.naturum.ne.jp/e817639.html#comments

yozoさん ありがとうございます
【2010.02.11 Thursday 00:58】 author : sirius08
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愛の糸 #44 玲王・愛の糸(れお・あいのいと) 最終回
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「それからね、拓真は佳苗さんと結婚する事を選んだの。
選んだ時に玲王くんを受け入れる覚悟もきめてね。

でも、なかなか佳苗さんは、付き合うことも承知してくれなくてね、
結局結婚したのは、四年前。
拓真が大学を卒業してから、三年も経ってたわ。」


 「結婚する前から、もう俺と会う時のことを考えてたの?」

「そうよ。結婚が決まった時、私も嬉しかった。」

「どうして?俺みたいな子供がいるのに?」

祥乃は微笑んで、玲王の手を握った。


 「えぇ。だって、娘が出来たのよ、それから孫まで。」

「孫って・・・?」


 「私は子供は生めなかった。
でもね、拓真という息子に恵まれ、
佳苗さんと結婚する事によって、娘が出来たの。
娘の子供は孫でしょ。

玲王くんは、拓真が佳苗さんと結婚した時から、私の孫になったの。
だから、ずっと会いたかった。

私の孫に、会いたかったの。」



玲王は、目頭が熱くなるのを感じた。
今までの人生の中で、これほど人に愛されていると感じたのは初めてだった。

 

 



「お正月も行ったんだ。
星が綺麗でね、手が届きそうなくらいに近くにあるんだ。」


「いいなあ。玲王くん。
うちはパパとママと三人家族でしょ。
玲王くんには、おとうさんのいる家のほかに、おかあさんや妹や拓真さんや、もう一人おばあちゃんもいるんだね。

私、玲王くんと結婚しようかな。
そしたら、その田舎にも行けるんだよね?」

「な・・・何言い出すんだよ!」


玲王は、子供のくせに、と思いながら、またチラッと奈々緒の胸のふくらみに目がいき、すぐ横を向いた。


 「ちょっと、変なとこ見たでしょ!」

「見・・・見てないよ!」


玲王は必死で否定しながら、今度拓真の田舎に行った時は、
祥乃を『おばあちゃん』と呼んでみようかと、そんな考えが浮かんでいた。




二〇〇六年平成十八年六月十八日(日)          おわり





長い間 ご愛読 ありがとうございました
いつも ランキングご協力 感謝にたえません

【2009.10.22 Thursday 18:30】 author : sirius08
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愛の糸 #43 玲王・愛の糸(れお・あいのいと)
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はじめから読まれる方は こちらから


卒業式当日は、義母の祥乃も上京してきた。
拓真は、祥乃に会わせたい人がいると言い、さらに会った時に何も言わずに座っていて欲しいと頼んだ。
拓真はあらかじめ、義母が出てくる事を佳苗に隠して、卒業で仕事も辞めるので、会って欲しいと頼んでいたのだ。



かくして佳苗がやって来た。
佳苗はかなり驚いている様子だったが、祥乃は拓真に言われたとおり、挨拶の後は黙って座っていた。


佳苗はお決まりのお祝いをのべると、あとは軽い世間話をした。
そして、食事をすませると、そそくさと帰ろうとした。
拓真は佳苗の帰り際、祥乃を残して佳苗を店の出口まで送り、さらにまた会ってくれるよう頼んだ。
佳苗は困ったように、ため息を何度かついて、ようやく約束してくれた。





 「どう?彼女。」

席に戻った拓真は、祥乃の顔色を伺いながら、そう聞いた。


 「拓真が選んだ人なら、義母さんは誰でもいいわ。
 結婚するつもりなの?」

「いや、まだ付き合ってもいない。」

さすがの祥乃も、あきれて物が言えないという顔をした。


拓真は佳苗と会った時から、義父が亡くなって東京に帰った時の出来事、今までの事を祥乃に話した。



 「で、その晩は、あったの?」

祥乃は身を乗り出して興味津々のまなざしを拓真に向けた。


 「そういうこと、普通聞く?」

「だって、大事な事じゃない。
それに、私は母親であり、父親のかわりでもある訳だし、聞きずらい事も聞かないとね。」


 「・・・それはいいとして、彼女と付き合って、いずれ結婚したいんだ。」

祥乃は拓真の眼をじっと見つめた。

「覚悟はあるの?」

拓真の眼が泳いだ。


「佳苗さんの過去を丸ごと引き受ける覚悟はあるの?
 佳苗さんは、簡単には付き合うことも結婚も承諾しないわね。
それだけ重い過去を背負ってるのよ。
今も、会えない自分の子供が生きて、どこかで育っている。
それを忘れられるはずがない。
それに、いつかその子供と再会する時が来るかもしれない。
その時その子をきちんと受け入れられる器が、拓真にあるの?」


 「そ・・・それは・・・。」

「よ〜く考えなさい。
そして、それでも佳苗さんが良いなら、お義母さんは反対しない。
拓真の、自分の意志で決めなさい。」



ありがとうございました
いつも ランキングご協力 ありがとうございます

【2009.10.16 Friday 18:58】 author : sirius08
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愛の糸 #42 玲王 ・愛の糸(れお・あいのいと)
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はじめから読まれる方は こちらから


広い畳の部屋が続き、奥の仏間に祥乃は一人座っていた。
なにかしら、仏壇に話しかけている様子だった。

玲王がどうしたものか、迷いながらたたずんでいると、祥乃が気配に気づいたのか、振り向いた。



 「あら、玲王くん。立ってないでいらっしゃい。
今、拓真のお義父さんに、玲王くんの事、報告してたのよ。」


玲王が祥乃の隣に座ると、祥乃は玲王の手を取った。

「会いかったわ、本当に。やっと会えたのね。」


 「・・・俺に会いたかったの?どうして?
伯母さんと俺は・・・。」

「他人よ。そう言いたいんでしょ。
でも、拓真だって他人なのよ。血の繋がりが無いんだから。」


 「でも、拓真さんは・・・。」

「同じよ。同じなの。
でもね、血じゃなくて、もっと違うもので繫がっているのよ。
拓真も、玲王くんも。」


祥乃は拓真が佳苗と結婚するまでのいきさつを話し始めた。

「二人の馴れ初めはね・・・。」

 

 





拓真と佳苗は拓真が大学三年の時、新しいアルバイト先で知り合った。
その時拓真は二十歳。佳苗は三つ年上の二十三歳。
その会社の正社員で、拓真にいろいろと仕事を教えたり、指示をしたりする関係だった。


アルバイトではあったが、忘年会や新年会、歓迎会や送別会といった席には誘われる事が多く、佳苗とは少しずつ近づいていった。


翌年就職も決まり、来春にはこの会社を去るのだ、と思った時、拓真は初めて佳苗を女として意識した。
とは言っても、佳苗は入社三年目のベテラン社員。
年も上だし、拓真を男と見てくれているとは考えにくかった。



年が明けて卒業が近づいても、拓真は佳苗に何も言い出せずにいた。
ところがそんな拓真に義父が危篤の知らせが入り、そのまま拓真は実家に帰り、十日間ほどアルバイトを休んだ。



拓真がアルバイトに復帰した日、拓真は佳苗に飲みに誘われた。
二人きりで飲みに行くのは、初めてだった。



佳苗は努めて明るく振舞い、食事の場を盛り上げた。
しかし、二軒目のショットバーで、アルコールの量が増えてくると、とたんに泣き始めた。
泣き上戸だったのかと、拓真は改めて驚いた。



しかし、泣きながら話す佳苗の話は、佳苗の出生や家族の過去にまつわる話だった。
拓真は初めて、佳苗の壮絶な過去を知った。

よくよく考えてみれば、佳苗は自分と同じように、肉親を失った拓真を元気付けようと飲みに誘ったのかもしれない。
だが、いつの間にか飲みすぎてしまい、つい自分の過去を話してしまったのだろう。

 



翌朝拓真が自分のアパートで目覚めると、テーブルに書置きがあった。

「お世話になりました。ごめんなさい。」

佳苗からだった。

夕べ、したたかに飲んだ佳苗は、自分の家すらまともに話す事ができず、仕方なく拓真は、拓真のアパートの拓真のベッドに泊めたのだ。


おそらく、佳苗は知らない部屋のベッドで目が覚め、拓真が横で眠っているのを見て驚き、あわてて帰ったのだろう。


こういう場合、ごめんなさい、は男のセリフではないのか?
と拓真はいぶかったが、かなり微妙な展開ではあった。




だが、その日のアルバイト先での佳苗は、まるで何も無かったように振舞っていた。
そして、そのまま拓真の大学の卒業式が来た。

ありがとうございました
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【2009.10.09 Friday 23:05】 author : sirius08
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愛の糸 #41 玲王・愛の糸(れお・あいのいと)
JUGEMテーマ:恋愛小説
 

はじめから読まれる方は こちらから


「えぇ、ナニナニ?そのナレソメ聞かせてよ。」

三角奈々緒にせかされて、嵯峨玲王は、昨夏、拓真の田舎に行った話を始めた。

 

 



玄関を入って廊下は無く、目の前がおそらく居間のようだった。

「先にお線香上げてね。」


祥乃は開け放した奥の部屋へ案内し、拓真、佳苗、露海とともに、仏壇にお線香を上げて拝んだ。
これも、玲王には新鮮な体験だった。
玲王の家には仏壇は無いのだ。

さらに鴨居に神棚があり、それも手を二回合わせて拝んだ。

「仏壇とお墓はね、手を合わせるだけ。
でも、神棚は両手を開いたまま音をたてて二回、叩くように合わせてから拝むのよ。」

神棚を初めて見た玲王は、祥乃に言われるままに手を合わせた。

 


祥乃が用意したお盆用の精進揚げ、ほとんど庭で作った野菜を使用したお煮しめと漬物、それに近所の農家に頼んで買っているという有名な銘柄の米のご飯、自家製味噌の味噌汁。
すべてが玲王には初めて尽くしだった。


 
 
 昼食が終わると佳苗は台所に入り、祥乃の片付けの手伝いを始めた。

拓真は祥乃の入れてくれたお茶をすすっていたが、思いついたように、玲王と露海を家の外に連れ出した。

まず、祥乃が営んでいる小さな雑貨屋を案内され、コンビニとは違った、ガチャガチャと物が重なって並んでいる様子に驚かされた。
駄菓子と呼ばれる菓子類もあり、ひもを引っ張ると番号が出て、何かが当たるクジのような物は「トスケ」と呼ばれ、何も当たらない時は「スカ」と書いてあるらしかった。



外に出ると、店の前は一応舗装された道路だが、一歩横道に入るとそれらはすべて土と石の自然な道で、玲王を感嘆させた。
さらに周りはほとんど農家が多く、畑や田んぼが山々に広がっており、これが世に聞く段々畑かと、初めてリアルに実感した。

 


拓真が玲王、露海を連れて家に戻ると、祥乃と佳苗がお茶を飲みながら笑っていた。


なんて楽しそうに、佳苗は笑っているのだろう。
叔且と結婚していた半年間で、桐代と笑いあったことなど、一度でもあったのだろうか。


 玲王は母が父と別れて幸せであると、認めざるを得なかった。


拓真達が中に入り、談笑に加わった。初めて来た家なのに、玲王もいつの間にか一緒に笑い、学校や友達の話なども、祥乃に話していた。

 


祥乃がいつの間にか姿が見えなくなったが、拓真達は気にも留めずに話しを続けている。
玲王は気になって、祥乃を探そうと席を立った。


ありがとうございます
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【2009.10.02 Friday 19:08】 author : sirius08
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愛の糸 #40 嵯峨玲王(さが れお)の繋がり
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「お義父さんも同じ気持ちよ。
私達は・・・私は拓真が八歳から十八歳まで、十年間一緒に暮らした。
私は拓真に十年という時間をもらったの。
大切な大切な宝物よ。
だから、その宝物だけで充分なの。
私は一人でも大丈夫。
拓真はどこにいても私の息子だもの。
拓真は拓真のしたいように、好きなように生きればいい。
拓真がどこかで元気でいてくれるだけで、私は幸せなのよ。」

 

 




 「それで拓真さんは東京に就職したの?」

「そう。
 俺、その話を聞いた時に、それまでおかあさん事、
『おかあさん』て呼べなかったんだけど、もしも言わないまま何かあったら、って思ったんだ。
最初、恥ずかしかったけど、一回言えたら、おかあさん、泣いちゃってさ」



 奈々緒は黙って玲王の話を聞き入っていた。

「それに、すごい人だよ、拓真さんのお義母さん。
 夏に行った時にさ、俺、かあさんと拓真さんの馴れ初め、聞いたんだ。」

「ナレソメ?」

「それも拓真さんの、その伯母さんに教えてもらったんだけど、
 え〜と、若い男女が知り合ったキッカケだったかな?」

 

 



昨年のお盆に拓真の実家に行く話しは、最初父の嵯峨叔且も難色を示した。
玲王にとって全くの他人の家だからだ。
しかし、拓真の義母が、どうしても会いたがっていると、拓真と佳苗は何度となく説明し、遂には叔且を、「うん」と言わせた。

 




東京から拓真・佳苗・玲王・露海が、拓真の車でまるで四人家族のように、拓真の田舎へ出発した。
運転席に拓真、助手席に佳苗、後ろの席に露海と座り、玲王にとって初めての東北への旅だった。



道々見る風景は、東京ではなかなか見られない美しい海だったり、壮大な山だったり、田んぼや畑が続いていたり。
玲王は見るものすべてに目を輝かせた。

高速の途中のパーキングで四人でアイスクリームを食べたり、少し珍しい、その土地のキーホルダー等の土産物に目を奪われたり、行きの長い時間さえ楽しくてしかたなかった。


高速道路を降りてから、拓真は森弥家の墓所に寄った。
拓真の父母兄、そして義父が眠っている墓だ。

山の中の急斜面に点々と並ぶ墓石。
墓の前の細い通路は前日の雨でぬかるんでいて、玲王は何度も足を取られそうになった。

斜面の頂上近くに、まだ新しい墓があった。
拓真の話だと、拓真の義父の七回忌に、
義母が「生きているうちに新しくしたい。」と言って、
作り直したばかりだと言う。

言われてみると、周りにあるいくつかの古い墓は、
丸い石に刻まれているだけだったり、
一人一人の墓を作ったのか、
同じ場所に大小いくつかの丸い墓石がランダムに並んでいたりした。


お墓参りというものを、ほぼ初めての玲王には、新鮮な驚きがあった。
墓に、花とお供え物、お線香を供えて一人一人拝むと、不思議な感動が胸に広がった。


 

墓所から拓真の家までは車で約十分だった。
ここに来て、玲王は急に不安になった。
拓真から話は聞いていたが、初めて会う拓真の義母と、うまく話ができるだろうか。
父、叔且が心配していたように、玲王には全くの他人なのだ。




しかし、その不安はすぐに杞憂だとわかった。
拓真が、家の引き戸を開けると、嬉しそうな顔をした森弥祥乃が走ってきた。そして、すぐに玲王の手を取って、中へと導いたのだ。



ありがとうございました
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【2009.09.27 Sunday 01:38】 author : sirius08
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愛の糸 #39 嵯峨玲王(さが れお)の 繋がり
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玲王が拓真から聞いた話では、拓真は中学三年の時に伯父伯母と養子縁組をしたが、なかなか「おとうさん」「おかあさん」とは呼べなかった。
照れもあったし、今更という感じもあった。

祥乃夫婦も無理強いはせず、結局、伯父伯母のままで、東京の大学に進学する事になった。


四年の春に東京に就職を決めた時も、祥乃夫婦は反対しなかった。
ところが、秋頃から伯父が体調を崩し入院した。
当初祥乃の話では、たいした事は無いような口ぶりだった。
ところが年が明けて卒業を控えたある日、伯父が危篤という知らせが届いた。




「どういう事なの?!」

拓真が東京から駆けつけると、すでに伯父は昏睡状態だった。

「ごめんね。ごめんね。」

祥乃は何度も謝った。


「本当は肝臓癌で、見つかった時は手遅れだったの。
でも、この人、拓真には絶対知らせるなって。
卒業を控えた大事な時だからって。」


拓真は、もう祥乃を責める気力も無かった。
我が子同然に育ててくれた伯父の、意識の無いやせ衰えた手を握った。
すると、一瞬指がピクリと動いた。


祥乃が叫んだ。叫んだ、と言った方良いだろう。大声で叫んだ。


「拓真、お願い!
おとうさんて、呼んであげて!
最後に一度でいいから、おとうさんて呼んであげて!」


拓真の胸に祥乃の言葉が重くズシリと響いた。
ためらいは無かった。


「お義父さん!お義父さん!」

伯父の指がもう一度動き、伯父がうっすらと目を開けた。
そして拓真を見つめると、ゆっくりととぎれとぎれに、何か口を動かした。


「お義父さん、何が言いたいの?お義父さん!」

拓真はそっと、伯父・・・いや義父の口に耳を近づけた。
義父は消え入りそうな声で、はっきりと拓真に言った。


「俺の・・・息子だ。拓真・・・。」


そのまま再び意識を失い昏睡状態になり、その直後、拓真を本当に愛し育ててくれた二人目の父が逝った。

 




瞬く間に一週間が過ぎて、告別式・初七日・四十九日・百か日を含む法要も一時に済ませると、拓真が東京に帰る日が明日と迫った。


 「義母さん、俺、こっちに就職しようか?」

「あら、いつの間に、義母さんて呼んでくれてたの?」


 拓真も気づかなかった。
 告別式等の中ですでに義母と呼んでいたような気もするが、祥乃も気づいていなかった。


「おかしいわね。
呼んでもらいたいって、思ってたのに、最初に呼ばれた時がいつか判らないなんて。
感動しそこねたわ。」


 「いや・・まあ、それはそれとして、就職・・・。」

「いいのよ。今のままで。」

祥乃は声を強めた。


 「だって、義母さん、ひとりになって・・。」

「拓真、よく聞いて。
あなたに、面倒見てもらいたくて、養子にしたわけじゃないのよ。
拓真の人生は拓真のものなの。」


祥乃は言葉を切り、仏壇の義父の写真を見つめた。

ありがとうございました
いつもポッチン ありがとうございます

【2009.09.19 Saturday 15:20】 author : sirius08
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愛の糸#38 嵯峨玲王(さが れお)の 繋がり
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嵯峨玲王は、待ち合わせの駅で待っていた。
駅前広場の大時計が五分前を指していた。
玲王は携帯を出して、待ち合わせについて書いてある、メールを読み返した。



「玲王くん!」

明るく大きな声が響き、振り返ると流行りの派手なキャミソールに短めのボレロ、フレアースカートの中にジーンズ、ミュールを履いた女の子が立っていた。

「久しぶり、一年ぶりだね。
背、伸びた?何センチ伸びたの?今、身長何センチ?」


矢継ぎ早に話しかけてくるこの少女は、どうやら待ち合わせした、三角奈々緒(みづの ななお)らしい。

「え・・・あの、奈々緒ちゃん?」

「あぁ、ごめんね。
 私、この一年で15センチ伸びちゃって、今158センチなの。」
  
 158?俺は5センチしか伸びてないから、162だぞ。


「今日、玲王くんに会えるの、すっごく楽しみにしてたんだよ。
実はね、今日私の十二歳の誕生日なの。」



四月三日に生まれた奈々緒は、春休み中に誕生日がやってくる。
この春、小学六年だ。
そして玲王は、三月三十一日生まれだから、つい先日、十四歳になったばかりで中学三年。
学年は三学年違うが、実際の年は二つしか違わなかった。



 「ごめん、知ってたら、何か用意したのに。」

「いいの!玲王くんと会えたことが誕生日プレゼントよ。
 嬉しい!会いたかった!歩こう、歩こう。」


奈々緒にせかされるまま通りに出た。
奈々緒が腕を絡ませてきたので、玲王が驚いて奈々緒の方に顔を向けると、キャミソールのふくらみが目に入ったので、慌てて目をそらした。



 女ってやつは、ちょっと見ないうちに、まるで別人のように成長するのか。
 つい一年前、柏倉クリニックで泣いている奈々緒を抱きとめた時は、妹の露海と同じような感覚だったのに。

 


 「じゃあ、九州には一年しかいなかったんだね。」

「そうなの。
去年、玲王くんに助けてもらって、ママに本当の事、言えたじゃない。
あれから、春休みにパパのいる九州まで行ったんだけど、パパの転勤二年で終わっちゃって。
でも、楽しかったあ。
九州の人は明るくて早口で、すぐ友達も出来て。
急に東京に帰る事になったから、メル友たくさん出来ちゃった。」


 本当に、明るくて早口になっている。
 口がはさめない。


「でも、前の学校は嫌だったから、わがまま言って、前よりズーッと遠い所に転校するの。
でも大丈夫、私、友達作るコツ、つかんで帰ってきたから。
玲王くんはどう?」


これだけ明るければ、友達の心配なんていらないだろう。


「うん、メールしたけど、同じ学校に戻った。
おかあさんに会えたら、何も怖いもの無くなっちゃってさ。
何言われても、何されても無視してたら、そのうち俺の事からかうの、あきたみたい。
今は全然。普通に学校に行ってるよ。」

 



玲王と奈々緒は公園を見つけて、芝生のある広場のベンチに座った。


 「今、月に一回おかあさんの所に行ってるんだけど、たまに他の日も勝手に行ったりしてるんだ。」

「玲王くんのおうちの人は大丈夫?」

「うん、おとうさんとおじいちゃんは知ってるから。
ただ、おばあちゃんにばれそうになった時、何回かあってさ。
いつもおじいちゃんが助けてくれるから、何とかうまくやってるよ。」


公園では家族連れやカップルがたくさん来ていて、おのおの休日を楽しんでいる。

「そういえば拓真さんだっけ?」

「うん、おかあさんのだんなさん。
メールじゃ詳しく打てなかったんだけど、夏に拓真さんの東北の田舎に行ったんだ。」

「あの・・・血の繫がらないお義母さんの話?」

「そうそう。」



ありがとうございました
いつも ポッチン 感謝でございます
【2009.09.12 Saturday 16:06】 author : sirius08
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愛の糸 #37 柏倉康寛の逡巡(かしわぐらやすひろのしゅんじゅん)
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泣いている奈々緒を玲王にまかせて、柏倉は一旦、奈々緒・玲王・叔且を待合室に戻した。
やや放心状態の茉莉は、三人が出て行った後、柏倉に勧められるまま椅子に座った。


「あの、先生、私、前にも言いましたけど、役員は辞められません。
今辞めたら、無責任で、みんなに迷惑かけるし、四月の総会まで交代出来ないんです。」


「ええ、以前にも聞きました。
私が、役員は辞められないかと、三角さんに聞いた時ですよね。」

 



三角奈々緒の不登校の始まりは、学校での小さないさかいだったと聞く。
しかしキッカケはそうでも、母親の茉莉に愛されてないと、奈々緒が思い込んでいる事が大きな要因の様に思えた。

幾度となく作られた箱庭に、奈々緒自身が存在していない事が、如実にそれを表していたのだ。

 


「もう二月も終わりですよ、三角さん。
三月は転校には一番区切りが良いのではないですか?」


「駄目ですよ、先生。総会は四月の終わりなんです。
転校するにしたって、五月にならなければ。」


茉莉は引かない。
五月では、奈々緒は茉莉が、やはり奈々緒より役員が大事なのだと思ってしまう。


 「四月にあなたのする仕事は何ですか?」

「総会資料作り、PTA会員の全ての人の分を印刷して配布して。
それから、総会の段取り決めて・・・。」


 「総会当日の三角さんの仕事は?」

「え・・と、司会は副会長だし、質問は各部で受けるから・・・
そう、旧役員が揃って挨拶する時、会長だから私が代表で挨拶しないと。」


柏倉はじっと聞いていた。
茉莉の眼に柏倉が映り、茉莉は目をそらした。


 「総会資料作りや、総会の段取りは三月中に出来ないんですか?」

「そ、それは出来ますが・・・。」

「それならば、総会当日の挨拶だけですよね?」

茉莉は答えない。


「挨拶だけなら、その副会長に頼めないんですか?」

 



茉莉が相談室から出てきて、すぐ奈々緒が中に入った。
すでに涙は乾いていた。


 「奈々緒ちゃん、よく言えたね。
先生、びっくりしたよ。えらかったね。」


奈々緒は少しはにかみながら、うつむいた。

「玲王くんがいたから。玲王くんに、助けてもらったの。」

「そう、いいお友達が出来たね。」

「はい。」

奈々緒は今度は顔を上げて、はっきりと返事した。

 

 



心理カウンセリングを学んでいた柏倉が、心療内科医になる為大学を受験しなおしたのは、もっともっと心を傷めている人たちの、力になれる勉強がしたかったからだ。
それが真実どれ程役に立っているかは、柏倉自身はわからない。
それでも柏倉は、この仕事を続けていくのだろう。

 



夏の太陽が相談室にも強く差し込んでくる。

「今日は暑いね。」

柏倉が窓から外を眺めると、それを目で追うように少年が首を伸ばした。 


ありがとうございました   

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【2009.09.05 Saturday 02:47】 author : sirius08
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愛の糸 #36 柏倉康寛の逡巡(かしわぐら やすひろのしゅんじゅん)
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初めから読まれる方は こちらから

「十一番でお待ちの患者様、相談室にお入りください。」


三角茉莉が立ち上がると、看護士は娘の奈々緒と、玲王の父・嵯峨叔且も一緒に入るように話した。
三人はいぶかりながら、言われるままに相談室に入っていった。

 



相談室には柏倉と玲王がいたが、三人が中に入ると、柏倉も玲王も立ち上がった。


 「奈々緒ちゃんのおかあさんに、お願いがあります。」

玲王は茉莉を見た後、奈々緒にニコリと笑い、もう一度茉莉を見た。


 「奈々緒ちゃんの為に役員を辞めて下さい。
そして、奈々緒ちゃんと二人で、単身赴任のおとうさんの所へ行って下さい。
お願いします」

玲王が頭を下げた。
 茉莉は、玲王が何を言ってるのか解らなかった。


「家族は離れちゃいけないんだ。一緒じゃないと。
奈々緒ちゃんは、うちとは違う。
家族三人で暮らせるんだから。」


それから玲王は奈々緒の両肩をつかみ、茉莉に向かうように奈々緒を立たせた。


「奈々緒ちゃん、本当の事を言わなくちゃいけないよ。
言わなければ、おかあさんも解らないんだ。
ちゃんと自分の口から言うんだ。
でなければ、いつまでも、何も変わらない。」



奈々緒は茉莉を避けるように、下を向いていたが、やがて決心したように顔を上げた。


「ママ、役員、辞めて。ママに役員、辞めて欲しいの。
ママの役員は大切なお仕事だから、ずっと言えなかった。
でも、私は、ママに役員辞めて欲しいの。
私は、ママと一緒にパパについて行きたかったの。」


やっとそこまで言うと、奈々緒はワァーと声を上げて泣き出し、玲王が奈々緒を抱きとめた。

 


ありがとうございました
いつも ポッチン感謝ち
【2009.08.28 Friday 22:01】 author : sirius08
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