6/24第三作初の短編集「白龍抄」発行水月あす薫(みずきあすか)
詳細はリンクしている「ルナーズファウンテン」でどうぞ。
 
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【2017.09.28 Thursday 】 author : スポンサードリンク
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テンシサマの誘惑


その店は まるで今さっきまで人がいたように 今あわてて出て行ったように見えた。


ベタベタと 仮押さえの張り紙が貼られている。


「どうしたの?何よ、これ!」


彼女が叫んでいる。


呆然と立ち尽くしていた私は 頭を殴られた思いで 痛みをこらえながら 目を伏せる。


「あなたが ここに投資すれば確実って言ったから 私 この店に10万円 投資したのよ。私にとっては大金なんだから!」


そう 子供のママ友に勧められ 私も同じく10万円投資していた。


ママ友は 100万円と言っていたが 私にも そんなに自由になるお金が無かったのだ。


そして、彼女に、ついこの投資話をしてしまった。




「友達がね、商売始める知人に100万円投資するんだって。投資金額によって 毎月売り上げに応じて 配当があるらしいよ。」


そう たまたま 幼馴染の彼女に話したのだ。


ところが彼女は、勧めたつもりは無いのに、この話に乗って来た。


自身もやりたいことがあり、店を出そうと思っていて、資金が足りないので困っていた、というのだ。


私自身 本当に儲かるのか自信は無かったが、彼女は乗り気になっていたし、ママ友には子供の友人の母と言う関係で義理もあり、私も10万円投資した。


しかし、実際 ママ友の知人の店が何を売っているのか よくわからなかったし、不安だらけのスタート。さらに、彼女だけに投資させるわけにはいかない、という幼馴染に対する責任のようなものだけが、私を支配していた。


そして、不安は杞憂では無くなった。


教えられた店に言ってみると 店はすでに差し押さえられており、今日会うはずだったママ友の知人はどこに消えたのか。逃げてしまったとしか思えなかった。


「私、あなたを信じたから10万円出したのよ。酷いじゃないの、どうしてくれるの!」


彼女の責める声は 胸に痛かったが、私自身どうしてよいかわからない。


ママ友に電話してみようか・・・・。


「やっぱり、テンシサマの言うとおりにしておけば良かった。」


テンシサマ?


「テンシサマの仲間には やめておいた方が良いって人もいたのよね。でも、私、お店、早く出したいって焦ってたし・・。悔しいわ。」


彼女のいうテンシサマは 人を癒す力を持っている方らしい。

テンシサマから力をいただた方たちは それぞれ独立し 人の心を癒すお店を出す人が多いらしい。

彼女も テンシサマから力をいただき 長年修行して いよいよ自分の店を出す準備をしていた。

しかし 資金繰りに苦労し つい私の話に乗ってしまったのだろう。



私は 彼女の店の邪魔をするつもりなど無かった。


今回の ママ友からの投資の件も 世間話として話しただけで 彼女をまきこむ気も 実際自分が投資する気も無かった。


しかし 彼女が投資すると言いだした時 話した私が 何もしないわけにはいかなかった。



「あなたを信用した私が馬鹿だったわ。もうテンシサマの言うことしかきかない!テンシサマの仲間にはソウルメイトだっているし 私のこと 何でもわかってくれるんだもの。」


彼女は そう言い捨てると 私が止めるのもきかず 帰ってしまった。


・・・彼女の失った10万円 私が彼女に返すべきだろうか。


私も楽な生活では無いが、働いているので いくばくかの蓄えはある。


ザッと計算しても なんとか 彼女に10万円 返せそうな気がする。



いや、待てよ。確かに話したのは私。まるで誘ったような形になってはいるが、これは私が負担すべきお金なのか?


違う。これは、ママ友の知人への投資。その知人が彼女に返すべきお金。

しかし、彼女は・・・。



私は、考え抜いて結局彼女との友情が壊れることを一番恐れている自分に気がついた。では、もう、ためらわず10万円、私が建て替えよう。彼女との友情と引き換えるなら、10万円は戻ってこなくてもいい。彼女には、ママ友の知人が返してくれたと言おう。



数日後、私は10万円用意して、彼女を訪ねた。彼女は出かけていたが、私には思い当たることがあった。

彼女は テンシサマから力をいただいてから テンシサマ、 そして そのまわりの新しい友人との関係を大切にしていた。お店自体 テンシサマのお力をいただいて 開くのだから。


テンシサマ どんな方で どんな人たちが まわりにいるのだろう。


私は 思い切って そのテンシサマのご自宅を訪ねた。かくして やはり彼女は そこにいた。


しかし


「あなたね、彼女を騙した人って。」


いや、騙したわけでは・・・。


出てきた女性は 私が彼女を騙した、と決めつけた。おそらく この人はテンシサマではなく、テンシサマの とりまきの一人に違いない。


「私は、あなたと彼女のお付き合いも反対していたの。あなたは 彼女をダメにするわ。あなたのような友達がいては 彼女は苦しみが増すばかり。あなたはテンシサマも信じないでしょう?」


・・・人にはそれぞれ考え方があり、私は何も否定するつもりはない。何を信じても、人に迷惑さえかけなければ、本人がそれで幸せなら、それでいい、と私は考えている。だから、もちろん、テンシサマも否定はしていない。


「あなたを信じたばっかりに 彼女はお金を盗られた上、友達に騙されるという 心の傷を負ったのよ。もう、2度と 彼女の前には 現れないで。」


騙した覚えは無いが、そう取られてもしかたがない。それに 事実 10万円という大金を、彼女が失ったのは事実。言い訳のしようが無い。



「彼女は あなたと離れたくてもなかなか あなたが離してくれなくて悩んでいたのよ。テンシサマのことも お店のことも あなたには 何も話していなかったでしょう。私が、あなたのような人には話さないように アドバイスしていたのよ。」


やっぱり・・・。彼女が よそよそしくなって 心が離れていっているのは気付いていた。気付いていて、気付かないふりをしていたのだ。誰かに言わされているのでないか、と 思われる言動もあったし・・・。お店のことなど、彼女のそぶりから、私が気付いてしまったことだった。



「もう、彼女には 近づかないで!」


でも、この10万円 返したくて・・・。


「帰ってちょうだい。」


ピシャリ! と ドアが閉まった。


お金は もう返せないのだろうか。彼女には もう会えないのだろうか。


テンシサマ あなたが本当に人を癒す方ならば 人を排斥したり 差別したりすることは 本意なのですか?それとも あなたの たくさんんのお弟子さんたちが 誤解や勘違いをされているのですか?


私は、返そうと思って持ってきた10万円の封筒を持ったまま、彼女のいるであろうテンシサマのお宅を見つめていた。


                  終わり

2010年11月26日(金) byシリウス


読んで下さって ありがとうございました


もし よろしければ ランキングポチなど  お願いたします<m(__)m>

「愛の糸」 こちらから

 
【2010.11.26 Friday 00:24】 author : sirius08
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夫と いふもの
 

「何にやってるの!今日は 結婚式でしょ?」



誰?



「お姉ちゃん 、モタモタしてる時間ないよ」



妹?


私、妹なんて いたっけ?



「あのぉ〜〜私、結婚してるんですが・・・」



「お姉ちゃん、別れたいって 言ってたじゃない。」



言ってましたが・・・・



「やっと だんなさん 了解してくれて 相手の人とも 話決まったから・・・」



「ちょっと待って。私、いつ ダンナと 別れたの?」



「細かいことは良いよ。」



良くないだろ!!!



「時間ないよ。早く用意して 家 出ないと。」



「家 出るって 掃除してないし ダンナと話も・・」



「荷物は 後で送ってもらえばいいじゃん。それより 新しい生活が大事でしょ?」



妹と名乗る女は さっきから 勝手に私の荷物を整理している。



まてよ、ゆうべダンナが 寝室で珍しく 私にふれてきたっけ。



暑くて嫌! って 拒否ってしまったけど あれって お別れのつもりだったの?



たしか 今日は ゴルフって言って 出かけたけど・・・


電話してみようか・・・



「あ・・・あの 私。」



「用意 出来たのか?オレ 見送れないけど 。」



は?了解 済み???



「お姉ちゃん、時間ないよ。」



妹は 荷物をバッグに詰めて 私をせかしてくる。



私は 電話を切ると 妹を振り返った。



「最後に 手紙を書きたいの。」



夫への 最後の手紙



この二十年の 月日が波のように襲ってくる。



何を書こうか



子供のこと 持病のこと 家のこと 



仕事しながら 子育てした日々



ありきたりの言葉しか 思い浮かばない



なんだろ



便せんに 滴が落ちて 濡れている



大っ嫌い!



何度も 別れると 繰り返した日々が 嘘のようだ



どうしよう



最後の一行



それを書き終えたら もう 本当に お別れ



書いたとたんに すぐに文字が 滲んだ



・・・・大好き







「あれ?」



夢?



目が覚めた



夫は もう ゴルフに行っている



え?



嘘?






私 あの人のこと 好きだったの?



ひとり 赤面





絶対 !!! あの人には 教えない。



子供たちの誰かが



これを読んだら



呆れるんだろうな




いや のろけてるわけじゃ ないからね!!!!!

 

 

2010.08.29 by シリウス


【2010.09.11 Saturday 13:24】 author : sirius08
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サトー家の人々
JUGEMテーマ:短編小説
 
『愛の糸』 初めから読まれる方は こちらから



家の固定電話が 鳴り 私は受話器をとる。



「サトーだげど」



「佐藤さん? どちらの佐藤さんですか?」



「んだがら、お宅の長男に子供 生まれたべ?その相手の・・・」



「え?」



私は 振り返って 子供の相手をしている 長男を見る。



「あの・・・おとうさま ですか?」



「そんな たいそうなもんじゃねぇ。子供、男の子だべ」



「はい、そうですが・・・。」




長男が突然女性を連れて帰って来たのは つい数日前。



仕事は?と いう疑問の前に その女は?と聞くのは 親として当然と 思ったが・・・


女は彼女には違いないが 入籍したかどうかは さだかではなく 嫁と言ってよいのか?



だが 夜は息子の部屋だった所で 二人で寝ている。



それより何より・・・お腹が大きくなっているのは 太ったからか?




「あの、佐藤さん。いつの間にか 出産してたみたいで」



「あ? サトーだ。 出産?いんだ、いんだ。こっちは それが普通だから。」



普通って・・・・



「もともと 男しか生まれない一族だが 娘は突然変異でな。

でも いい男 見つけて また 男 うまれだがら いんだ。」



「は・・・はぁ・・・。」



何か、一本抜けているような会話。第一 この佐藤という男は 彼女の父親か?



「もう、歩いでっぺ。」



まさか 歩くなんて 生まれたのは ついこの間



「あ・・・・歩いて・・・・ます。」



私は 眼を疑った。



赤ん坊だったはずの男の子 私の孫であるはずの男の子は



・・・歩いている。



「元気なら いんだ。」



「あ・・・あの・・・」



私は混乱しながら 大切なことを思い出した。



そう、この男の子 私の孫が生まれた後に 長男の連れてきた娘は消えていた。



「あの 娘さんですけど」



「娘 あぁ こっちに帰って来てる。あと二人も 男 見つけて よぐ出来た娘だ。」



「あと二人?」



もう 浮気?



「あんたんとこ 男 三兄弟だってな。あと二人も 帰ってるっぺ。」



え?次男と三男は 長男同様 家を出て 一人暮らし している。



次男は長男同様 社会人、三男は大学生。



そんな 仕事や学校があるのに 帰ってるわけ・・・



「あ〜〜あ、子供と遊ぶ声 電話越しにも 聞こえるなぁ。」



嘘!?




・・・・次男と 三男が    長男の息子と 遊んでる。



わ・・・私の孫・・・だよね?



なんで もう 走ってるの???



「おれら一族は 成長が早いんだ。」



早すぎる〜〜〜〜!!!!



「まぁ 迎えに行くまで よろしくな。あぁ 新しい仲間が増えて 良がった。」




電話は 切れた。



佐藤・・・いや サトー一族。



彼らは 何者なんだ。



この男の子の孫も 三人の息子たちも 皆 彼らの仲間になる・・・。







サトー一族は 男しか生まれず 男しか繁殖しない。


しかし これでは 血族間だけの交配となり 問題が起きる。



そのため 突然変異で まれに 女が生まれる。


女は新しい仲間を 連れてきて また男を繁殖させる。


時には その新しい仲間に兄弟がいれば すべて仲間になる可能性が高い。




見た目 人類と変わらぬ彼らの 特異な特徴は


男しか生まれぬため 男が出産するということ。



当然変異の女は 新しい仲間となる男を妊娠させて


男の子を産ませて 仲間にする。








長男が帰って来た時に 彼の異様に大きかったお腹



帰って間もなくの 出産。



いや、一晩寝て 起きたら 生まれていた赤ん坊。


そして たった数日で 歩き走り 笑う。



長男も 次男も 三男も サトー一族に 見入られたのか。




サトー一族って 何だ?



私は受話器を持ったまま 受け入れられない現実の中 狂気の世界の入り口を ノックしようとしていた。



                        終わり



2010年平成22年5月10日(月) by あすか



新作です。

読んでくださって ありがとうございましたm(u_u)m


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【2010.05.25 Tuesday 22:55】 author : sirius08
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