6/24第三作初の短編集「白龍抄」発行水月あす薫(みずきあすか)
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【2017.09.28 Thursday 】 author : スポンサードリンク
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愛の糸 #37 柏倉康寛の逡巡(かしわぐらやすひろのしゅんじゅん)
JUGEMテーマ:恋愛小説

初めから読まれる方は こちらから 

 

泣いている奈々緒を玲王にまかせて、柏倉は一旦、奈々緒・玲王・叔且を待合室に戻した。
やや放心状態の茉莉は、三人が出て行った後、柏倉に勧められるまま椅子に座った。


「あの、先生、私、前にも言いましたけど、役員は辞められません。
今辞めたら、無責任で、みんなに迷惑かけるし、四月の総会まで交代出来ないんです。」


「ええ、以前にも聞きました。
私が、役員は辞められないかと、三角さんに聞いた時ですよね。」

 



三角奈々緒の不登校の始まりは、学校での小さないさかいだったと聞く。
しかしキッカケはそうでも、母親の茉莉に愛されてないと、奈々緒が思い込んでいる事が大きな要因の様に思えた。

幾度となく作られた箱庭に、奈々緒自身が存在していない事が、如実にそれを表していたのだ。

 


「もう二月も終わりですよ、三角さん。
三月は転校には一番区切りが良いのではないですか?」


「駄目ですよ、先生。総会は四月の終わりなんです。
転校するにしたって、五月にならなければ。」


茉莉は引かない。
五月では、奈々緒は茉莉が、やはり奈々緒より役員が大事なのだと思ってしまう。


 「四月にあなたのする仕事は何ですか?」

「総会資料作り、PTA会員の全ての人の分を印刷して配布して。
それから、総会の段取り決めて・・・。」


 「総会当日の三角さんの仕事は?」

「え・・と、司会は副会長だし、質問は各部で受けるから・・・
そう、旧役員が揃って挨拶する時、会長だから私が代表で挨拶しないと。」


柏倉はじっと聞いていた。
茉莉の眼に柏倉が映り、茉莉は目をそらした。


 「総会資料作りや、総会の段取りは三月中に出来ないんですか?」

「そ、それは出来ますが・・・。」

「それならば、総会当日の挨拶だけですよね?」

茉莉は答えない。


「挨拶だけなら、その副会長に頼めないんですか?」

 



茉莉が相談室から出てきて、すぐ奈々緒が中に入った。
すでに涙は乾いていた。


 「奈々緒ちゃん、よく言えたね。
先生、びっくりしたよ。えらかったね。」


奈々緒は少しはにかみながら、うつむいた。

「玲王くんがいたから。玲王くんに、助けてもらったの。」

「そう、いいお友達が出来たね。」

「はい。」

奈々緒は今度は顔を上げて、はっきりと返事した。

 

 



心理カウンセリングを学んでいた柏倉が、心療内科医になる為大学を受験しなおしたのは、もっともっと心を傷めている人たちの、力になれる勉強がしたかったからだ。
それが真実どれ程役に立っているかは、柏倉自身はわからない。
それでも柏倉は、この仕事を続けていくのだろう。

 



夏の太陽が相談室にも強く差し込んでくる。

「今日は暑いね。」

柏倉が窓から外を眺めると、それを目で追うように少年が首を伸ばした。 


ありがとうございました   

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【2009.09.05 Saturday 02:47】 author : sirius08
| 愛の糸 | comments(7) | - | pookmark |
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この記事に関するコメント
まとめて読ませていただきました。
ごぶさたしています。

シリウスさん、すごいな。。
これからもずっと、書き続けてくださいね。
| ゆかりん | 2009/09/05 9:54 PM |
今回も成長がまたありますね。

素敵な流れだと思います。
大人になっても成長すること、それが描かれていると思います。
| おっさん。 | 2009/09/05 10:55 PM |
>ゆかりんさん
ありがとうございます、

ファンタジーが多い私の作品の中では 珍しい作品かもしれません。
親を長くやるのも 無駄ではないようです。


>おっさんさん
ありがとうございます。

毎回 違う人間の視線で描く というのに 初めて挑戦した作品です。
実際には2006年に書いたものです。
| シリウス | 2009/09/06 11:08 PM |
私もね、上記のこと思ってました。
話の中心軸が先に通っていて、それに合わせて、かかわりのある人たちの目線で物語が進んで行くのは、よくあるのですが・・・
シリウスちゃんの、この作品は、話がそれぞれバトンタッチされて、成長しながら進んでいく。
こういう進展の仕方って、今までにありそうで、なかったよね!!
始めはちょっと慣れなくて戸惑ったんやけど、読み進んでいくにつれ、ハマってきました(笑)

そして、今回も号泣です。
お母さんが、もう少し勇気を出してくれればいいですね!

| ちさやん | 2009/09/09 2:51 PM |
ご無沙汰しております。
夏バテしていたのだけど、ちょっと余裕がでてきたので
読みにきました〜^ー^
自分自身のブログは更新できていないんだけどね。

ここまできても役員をやめられないってのはすごい責任感だよね
人って、一つのことをみつめすぎていると大事なことをみおとすんだってすごく実感します。
この良い方向に向いていく感じがとても楽しみです^^
| k aoi | 2009/09/11 9:49 AM |
>ちさやんさん
いつも ありがとうございます。

古い作品ですが 今にも通じるものがあるかもしれません。
親子の問題は永遠ですね。

>あおいさん 
ありがとうございます。

親がよそ見をしていると なぜか子供も よそ見をします。
私が親をやってきて たくさんの親子を見てきて思った実感です。
| シリウス | 2009/09/12 3:20 PM |

マジでむかつく!
こんな母親私だったら要らない!!!


何でわからないんだろう?
今自分の子供がどれだけ心を痛めているのか

そして一生懸命にすがろうとしているのか



この時を逃したらもう二度と修復は難しいに違いないのに
なぜわかろうとしないんだろう?


仕事より自分の子供の方が心配じゃないのか?
自分の子供が不登校ならいくらでも言い訳が出来るのに
それもしないなんて...

あほ過ぎて話にならない母親って気分悪すぎ!!!




| おみご | 2009/12/01 4:10 PM |
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